呼吸と体幹の安定 〜勝者の呼吸法

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勝者の呼吸法

森本貴義・大貫崇

 

一言で内容をまとめると、

「呼吸が体幹の安定に重要である」

という本だが、人間の身体の左右非対称性について、

内臓の配置から横隔膜や呼吸に関係してくることをわかりやすく

解説してあり、スポーツ全般の動きで参考になりそうだ。

 

 

肺と横隔膜

左右非対称性の前に、前提として呼吸の仕組みを

理解する必要がある。

 

肺そのものには筋肉は付着していないので、肺だけで呼吸することはできない。

肋骨の下で肺の土台のように付着する横隔膜という筋肉の働きによって、

呼吸することができる。

具体的には、横隔膜の屋根(肺の土台)はドーム状の形をしているが、

収縮すると屋根が下がって肺が大きくなるので(肺の中の圧力が低下するので)、

空気が入ってくる(息を吸う)。

反対に弛緩すると屋根が上がるため、肺の中の空気が押し出されることになる(息を吐く)。

 

身体の左右非対称性

そして、身体の左右非対称性は、骨格や筋肉といった、外面的なものではなく、

内臓の位置関係などから理解すると腑に落ちる。

 

左の肺と右の肺は大きさが異なる。

肺は葉(よう)と呼ばれる空気の入る部屋で区切られているが、

右は3葉あるのに対し、左は2葉しかなく、やや小さめになっている。

左側の胸郭には心臓があり、その分スペースが狭くなっているからだと

考えられているが、結果、右側の肺と左側の肺では酸素の出入りする量に違いがある。

 

また、横隔膜の右下に位置する肝臓は大きくて丸いが、

この肝臓の大きさにより、右側の横隔膜は押し上げられていて、左側の

横隔膜より少し高い位置にある。

また、心臓によって上から押さえられている左側の横隔膜は、右側より

面積が小さく薄くできている。

 

先に横隔膜の弛緩によって呼吸をしていることを説明したが、

右側の横隔膜は面積も大きく厚く、肝臓のおかげで高い位置にドーム状の形を維持しやすいことから、呼吸機能の右側は、左側よりも有利な状態にある。

要するに、人間は、呼吸機能から見ると、構造的に右側が優位であり、右側で呼吸しやすい。

そして、後述するが、右側の安定性が生まれやすい。

 

右側の安定性が生まれやすい理由

右側の呼吸機能が優位だと、なぜ右側の安定性が生まれやすいのか。

これは、体幹が安定しているとは、どういうことか理解すると腑に落ちる。

 

人間の骸骨を想像する。

後ろ側は、頸椎、胸椎、腰椎、骨盤が連なっている。

それに対し、前側は骨だけで考えれば、肋骨と骨盤の間は空洞だ。

直立している状態だけなら、バランスを取ることも可能だ。

しかし、座った状態から立ち上がろうとする場合、空洞に

なっているお腹の部分は、頭蓋骨や肋骨の重みを支えきれず、

バランスを崩すだろう。

 

そこで骸骨のお腹の部分に大きな風船を一つ入れてみる。

そうするとうまく立ったり、座ったりすることが想像できないだろうか。

 

体幹が安定しているとは、このイメージだ。

 

そして、この風船の上部が横隔膜ということになるが、

右側の肺は大きく膨らむため、風船の右上部は左上部と比較して

上から強く押されることになる。

強く押されるということは、圧力が高まるわけで、ゆえに崩れにくい

 

右側が安定する、踏ん張りやすいのはこのためだ。

陸上競技は大昔は左回りだったり右回りだったりしたらしいが、

現代では左回りに統一されたのも、左回りの方が右側へかかる

強い遠心力に耐えやすく、記録も出るからだろう。

ロードバイクで右カーブが難しいのも同じ理由だ。

 

左右差もそうだが、そもそも

横隔膜の働きが弱いと体幹が不安定になる。

呼吸はとても大事。

体幹を安定させるとはどういうことなのか

理解できる一冊。