生き抜くチカラ
ボクがキミに伝えたい50のことば
為末 大
陸上のハードル選手だった為末大氏だが、個人的には、現役時代より引退後の方が印象深い。
その為末氏が、人生で大事だと考えていること、子どもたちに伝えたいことをわかりやすく書いた本。
「諦める力」などベストセラーになっている本をいくつか執筆している同氏だが、それらを子ども向けにしたような感じだ。
印象に残った言葉をいくつかピックアップする。
自分に対する「後出しジャンケン」はしない。
あの時ああすればよかった、こうすればよかった、
あの選択のせいで今こんな羽目に陥っている、あの人の言うことを信じなければ…
これはあの時グーを出しておけばよかった、パーを出しておけばよかったと
言っているのと同じということ。
「後出しジャンケン」というのが何ともしっくりくる。
言われてみればそうだなと。
「今」に集中するしかない。
「負けグセ」をつけない。
これは自分自身、かなり思い当たる。
最初は一生懸命頑張るが、なかなか結果が出ない。
すると弱気になり、負けたときのためにはじめから勝負しない、
言い訳を考えておく、大事なところで踏ん張らない。これが「負けグセ」。
小さな成功、勝利を積み重ねて自分自身を信頼しようというのが
著者のアドバイス。
「自分にはこの道しかない」なんて思わずに
「ほかの道もある」と気づくだけで、いまがとっても楽になる。
子どもの頃、「無限の可能性がある」、「諦めなければ、必ずできる」、
「自分がなりたいものになれる」、そう言われて、
親や周りの大人に励まされた経験がある人は多いはずだ。
でも現実はそう単純じゃない。
どんな子どもにも向き不向きがある。どんなに好きでも上手くできないことはある。
なりたい自分となれる自分は違うことがある。
子どもが○○になりたい、と頑張っているが、なかなか結果が出ない、先が見通せない、
そんな時に、諦めなければ何とかなる、と言い続けるのは無責任だろう。
子どもの成長につれて、可能性が狭まってきたり、限界が見えてきたりするのをマイナスとして捉えるとそういうことしか言えなくなる。
そうではなく、その子が人生でどんなことを目標に生きていくか、社会の中でどんな役割を果たしていくか、
どんな貢献ができるか、道筋が見えてくる過程だと捉えれば、「ほかの道」を伝えることに負い目は感じなくなるはずだ。
シンプルで読みやすく、当たり前だけど日頃忘れている大事なことを思い出させてくれる。
挿絵もいい。温かみや希望を感じる。
疲れているとき、悩んでいるとき、手にとってページをめくれば、その時の自分に必要な気づきが得られそうな本だ。
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