思いやることも、思いやられることも、縦の関係に繋がる

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アドラー心理学入門 岸見一郎

 

「嫌われる勇気」「幸せになる勇気」の著者がアドラー心理学がブームになる前の、1999年に書いた本。

 

上の勇気二部作は哲学者と若者の対話を通してアドラー心理学を理解していく形式になっていたため、普通の解説的なものを読んでみたくて手に取った。

 

結論としては、あまり目新しいものはなかった。

新書で字数も少ないので、理解のしやすさは勇気二部作のほうが上だと思う。

 

そのなかで、勇気二部作には書かれていなくて(たぶん)、特に印象に残ったものを少しだけ。

 

アドラー心理学では、安易に承認欲求を満たすこと(ほめること)を否定する。

それは、人は承認されることを願うあまり、他者が抱いた「こんな人であってほしい」という期待をなぞって生きていくことになり、他者の人生を歩むことになるから。

 

また、自分は他者の期待を満たすために生きているのではないということを主張するのであれば、当然、他者も自分の期待を満たすために生きているわけではないことを認める必要がある。

 

そして、他者の行動や生き方が気に入らなくても、それは他者の課題であり、そこに介入してはならない。対人関係のトラブルは他者の課題に介入することや自分の課題に介入されることによっておこるからである。

 

したがって、自分の課題は自分で解決することが基本である。しかし、人それぞれ能力には限界があるので、他者に依頼して助けてもらうことも必要だ。もっとも、他者は依頼すれば自分を助けてくれるかもしれないが、それはその人の善意であって、義務ではない。

これは、他者から自分の気持ちを察してもらったり、思いやられることを期待してはいけないということであり、黙っている限りは自分の思いは人に伝わらないということを意味している。

言葉を重視し、言葉でコミュニケーションをとる必要があるのだ。

 

察することや思いやられることを期待することの問題は、自分の意図を理解してもらえなかった場合、最後は攻撃的になって主張を通そうとするか、主張は引っ込めるけれども復習的になって終わることが多いことにある。

「会田雄二は、察しと思いやりの世界はうまくいくと最上の世界になるが、歯車が少しでも食い違うと収拾がつかない憎悪とひがみの世界を作り上げてしまう、と指摘・・・」している。(日本人の意識構造 会田雄二)

 

アドラーは人間関係は横の関係で考えることが必要で、縦の関係はトラブルの原因だと言っている。

思いやることも、あるいは思いやられることを期待することも、頼まれもしないのに手出し口出しするのと同様、すでに見てきた縦関係に他なりません。相手が自分では何もできないと見なすことであり、少なくとも、依頼することもできない、と見なすことだからです。(167ページ)

 

 

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

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日本人の意識構造 (講談社現代新書)

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