ヒトはなぜ病気になるのか

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「病の起源 うつ病と心臓病」 NHK取材班

 

「ヒトはなぜ病気になるのか」

病気の根源にある発症の秘密は、人類あるいは生物の歴史・進化の極めて深い世界にある。

2013年に放送されたNHKスペシャル「病の起源」、4回シリーズのうち、「うつ病」と「心臓病」の2回分を盛り込んだ本。

 

うつ病は脳の防衛本能の暴走。

人類を含む脊椎動物の祖先である最古の魚は、わずか3センチほどの大きさで、その当時海で繁栄していた三葉虫アノマロカリスといった節足動物は最大で2メートルにも及んでいた。

そのなかで、生存していくために、天敵や外部の環境の変化に反応する「危険感知センサー」である偏桃体が備わった。偏桃体は、天敵などの危険情報を受け取ると、ストレスホルモンの分泌を指示し、ストレスホルモンが分泌されると、血糖値や心拍が上昇し、代謝が高まって全身の筋肉が活性化する。このメカニズムによって、生存競争を生き延びてきたのだ。

しかし、偏桃体を要とするメカニズムは、うつ病を引き起こすことが最近の研究でわかってきた。実験では、天敵の恐怖に1か月さらされつづけていたゼブラフィッシュが、水槽の底でじっと動かなくなり、群れを作らず一匹でいるようになる。さらに進むと、食欲や繁殖行動の低下などの症状もみられ、ヒトのうつ病と症状が似ているという。

 

また、平等や不平等にも偏桃体が関わる。

それは、人類の進化のなかで、集団で人と人との関係が重要になったことが理由として考えられるという。集団の中で他の人より損をすれば、本人の生存にとって不利になるから恐怖や不安を司る偏桃体が活動する。逆に他の人より得をする場合は、周囲のねたみを買い、集団から孤立するので生存にとって不利になり、偏桃体が活動する。平等であれば両方のリスクが生じないから反応しない。

 

狩猟採集時代は、得た食料を平等に分けあう社会だったが、文明が誕生し、農耕社会が訪れると、状況は一変する。

農業の技術が発達し、穀物の余剰が生まれると、それは「富」となり、人々に貧富の差が生まれる。そして階級社会へと移っていく。

階級社会は当然不平等であるので、うつ病が増えていく。

 

ほかにも、発達した脳による記憶力、ヒトだけが身につけた言語、孤独など、進化によってうつ病のタネが植え付けられている。 

 

現代の深刻化する貧困、多様化する職業(格差)、拡大する都市でのくらし(孤立)はよりうつ病の発生率を上げているとのこと。

人間の脳や体は700万年に及ぶ進化によって作られました。その歴史の99%以上は、狩猟採集の生活であり、農耕文明以降は1万年、現代社会に至っては、わずか100年あまりしかありません。つまり、私たちの脳と体は、現代社会の暮らしに対応し切れていないのです。ですから、祖先が行っていた規則正しい食事、そして、十分な睡眠と運動を心掛けることが生活習慣病を防ぎ、うつ病を予防・克服する基本となるのです。

 

話が飛ぶが、うつ病の仕組みがわかると、アドラー心理学の「共同体感覚」はとても有効な考え方だなと感じた。

 

 心臓病については、 冠動脈とかいろいろでてくるが、図がほとんどなく、イメージが湧きにくかったため、割愛。

直立歩行をすることによって、血圧の管理が他の動物より難しくなったようで、それに脳の発達が合わさって、人間の心臓は大変らしい(適当でスイマセン)。

 

病の根源的な原因を知ることにより、より根本的な予防や治療を考え、病との向き合い方も変わる一冊。

 

NHKスペシャル 病の起源 うつ病と心臓病

NHKスペシャル 病の起源 うつ病と心臓病