不条理のなかにみる希望 〜自転車泥棒

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自転車泥棒

ヴィットリオ・デ・シーカ

 

ロードバイクに乗っていると、とかく「自転車」という言葉に反応する。

この映画もそんな引っ掛かりから、傑作と言われていたのでなんとなく観た。

最初は全く理解できず…

ところが、今ではお気に入りの映画だ。

ちょっと高いけど、ブルーレイディスク版を購入したほど。

ということで簡単にご紹介。

 

 

 

あらすじ

舞台は第二次大戦で疲弊し、失業者があふれているローマ。

2年間仕事がなかったアントニオ・リッチは、運よく役所のポスター貼りの仕事を得る。

しかしその仕事をするには条件があった。

自転車を持っていることだ。

 

生活に困窮していたアントニオは、自転車を質に入れていた。

困って妻のマリアに相談すると、マリアは嫁入り道具のシーツを質に入れ、自転車を取り戻すお金を用意してくれる。

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妻マリアは強く、美しい


 

無事自転車を取り戻し、リッチ家に流れる幸せな時間。

6歳の息子のブルーノも喜び、自転車磨きをしてくれる。会話も弾む。

そして翌朝、アントニオは初めての勤務にブルーノと意気揚々と出かけていく。

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意気揚々と出発

 

だが、仕事の初日にアントニオを待っていたのは、自転車を盗まれるという悲劇だった。

 

自転車がないとやっとの思いで得た仕事を失ってしまう。

アントニオはブルーノと一緒に必死に自転車を探す。

 

友人と一緒に転売されていないか市場を捜索する →どこにもない

関係者と思われる老人を問い詰める →逃げられる

胡散臭い占い師に相談する →すぐ見つかるか、二度と見つからないかだと言われる(笑)

 

そして運よく犯人と思う若者に街中でばったり会う。

若者を問い詰めるアントニオ。周囲には人だかりができる。

若者は無実だと主張する。周囲も証拠はあるのか聞いてくる。

ブルーノが機転を利かせて警官を呼んでくる。

しかし、警官と若者の家の中を捜索するが何もない。結局、証拠不十分で訴えることはできず、自転車も見つからない。

 

途方にくれる二人。

重い空気が流れるなか、近くのスタジアムでサッカーの試合が行われていた。

そしてそこには大量の自転車が…

 

子役がすごい

この映画の魅力の一つが、ブルーノ役の演技だ。

愛らしく、でもどこかたくましく、そして子どもらしい。

映画全体が暗い雰囲気になりがちだが、ブルーノの動きや表情に癒される。

 

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トリッキーで、一生懸命

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お父さんに抗議

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イケメン!

 

つらいけど、希望はある

最後の5分間にこの映画の魅力が凝縮されていく。

父アントニオのとった行動に対する息子ブルーノの反応。

不条理や非情のなかでの誠実、勇気、絆、愛、それをひっくるめての希望…

 

ハッピーな終わり方ではないし、明確なメッセージはないので、捉え方は人それぞれになるだろう。

だからこそ、余韻も続くし、深く考えさせられる。

 

イタリア、ネオレアリズモ映画の代表作と言われている本作。

当時のアカデミー外国語映画賞も受賞している。

勧善懲悪もの、美しい景色、派手なアクションの映画に飽きていて、人とのつながり、人間の本質、生き方などを考えたいときに観るといいと思う。

 

ちなみに、Amazonプライムでは、英語吹き替えに日本語字幕がふられているものも配信されているが、映画の雰囲気がだいぶ変わってしまうので、元音声(イタリア語)に日本語字幕がふられているものがお勧めしたい。

 

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がんばろう


 

 

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