パイオニアSGX-CA600のインプレ

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イオニアのサイクル事業部のシマノへの一部譲渡が発表されて、まだ日も浅く、ちょっとした喪失感も感じているが、いいもののインプレは残しておきたいので、10カ月近く使った感想を今更ながら書いてみる。 

 

  

視認性が高い

日が昇りきった日中、まだ薄暗い早朝、どんな時間帯でも、数字や文字をはっきり読み取れる。輝度やコントラスト、カラーが絶妙に調整されていると感じる。

また、多様なグラフが用意されていて、情報を瞬時に感覚的に把握することが可能だ。

私の場合、通常のライドではパワーレベル、ローラー練習ではトレーニングメニュー全体像のグラフを表示させることが多い。

パワーレベルのグラフは、苦しいときでも、自分が今どの領域のパワーを出しているか一瞬で把握できる。ローラー練習では、CA600にメニューを入れている状態ならば、メニュー全体のどの部分を行っているのかがわかる。

(写真を載せたかったが、実際に目で見た状態と同じような感覚の写真が撮れなかった。残念)

  

Bluetooth送信ができる唯一のサイコン

CA600は、ANT+で受け取ったパワーの値をBluetoothに変換、送信する機能を持っている。この機能は地味であまり注目されていないが、ZWIFTを楽しむにはとても便利だ。

ZWIFTANT+接続で行う場合、通信距離が短いため、ANT+ドングルをパワーメーター近くまで延長する必要があるが、これが意外と面倒くさい。汗が大量に落ちるクランクの近くにANT+ドングルを置くのは精神衛生上あまりよくないし、ローラー練習の準備をするたびにUSBの長いケーブルを引っ張りだすのも億劫だ。

CA600があれば、Bluetoothに対応していないパワーメーターやペダリングモニターを使っていても、Bluetoothでパワーを送信できるので、ZWIFTBluetooth接続でプレイできるようになる。

他社のサイコンでこの機能がついている機種はおそらくない

  

発売後3回のアップデートにより大幅に機能向上

これまで3回ほどアップデートされていて、大幅に機能が向上した。

20196月のアップデートでは、ANT+ライト対応、地図リニューアル、

201911月は、到着予想時間、自動キューポイント、バーチャルパワー、バーチャルCda(エアロ効果の測定)、獲得標高表示、ラップリスト表示、

201912月は、標高目盛りの縮尺レンジ変更、通知メッセージの改善、アプリとの同期改善など、発売後1年足らずでここまでアップデートしている。

特にバーチャルパワーやバーチャルCdaは他社のサイコンにはない機能で(たぶん)、特筆すべきものだ。

バーチャルパワーは、パワーメーターを持っていない人でもパワートレーニングの感覚を知ることができるという意味で画期的だし、バーチャルCdaの発想も面白い。

 

弱点

ハード自体には弱点らしい弱点はない。

問題はデータアップロード先のシクロスフィアやスマホのコントロールアプリなどソフト面だった。

シクロスフィアは、サーバーの問題でログがすぐに確認できないことがちょくちょくあった。

事業譲渡によりシマノが新しいサイトを開設するようなので、そこには期待したい。

 

まとめ

 

このところのアップデートにより大幅に機能向上し、これが続けば他社のサイコンから頭一つ抜けた存在になるのではないかと思っていただけに、今回の事業譲渡のお知らせは残念である。

事業譲渡の交渉はそれなりに時間がかかるはずだ。

今思えば、現場には上のほうからある程度前からその方針が伝えられていたかもしれないが、現場の意地でここまでアップデートしてくれたのかな、と想像したりする。

パワーメーター普及黎明期に、独創的なアイデアをもって果敢に挑戦されたパイオニアのスタッフの皆様には感謝したい。ありがとうございました。

  

 

 

2019県民大会ロードレース(シニア)

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現在の自分のパワープロファイルでは、上位に絡むのは厳しいだろうと予想しつつも、最近のチーム練での調子の良さから淡い期待をちょっとだけ持ちながらエントリーした。

 

レースは開始直後からY浅さんが一本曳き。

それにS里さんがついて、ちょい離れたところで自分が3番手。

 

少ししたら垂れて追いつくだろうかと思ったが、

なかなかY浅さんが垂れないので、脚を温存したくて

3番手だけど、先頭交代を促し後ろへ。

 

しかし、後ろへ下がってしまうとなかなか前へ上がれない。

というか、前へ上がる力がない。

 

コーナーは狭いところもあって、自分のラインで曲がれないのと、

体幹のバランスの悪さや2週間前に慣れない力仕事で痛めた腰の影響で不安定さがあり、思いきりいけない。

横風の影響で後輪のグリップが抜けることもあった。

 

前のほうでは米須のO堂さんが少し飛び出して、結構な時間逃げている。

同じ米須のN原さんも強い。

自分が勝負に絡むには誰かのアタックに乗って、数名での逃げ切りしかないと思い、

ところどころ散発で出てくるアタックに反応するもうまくいかず。

 

そんなこんなで、最後まで集団内で何もできずにゴール。

 

良くも悪くも今の実力を確認できるレースだった。

冒頭のグラフはレースでのパワー分布図。一番右のレベル6無酸素領域とレベル1のリカバリー領域にほとんど集中している。

無酸素領域の出力と繰り返しを鍛えなければ、こういったレースではどうにもならないし、全体的な力が頭打ちになっているのもここがネックになっているはず。

体幹ペダリングについても地道に探る必要がある。

 

 

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dFRC Cycling(勉強中)

上の図は、勉強中でまだ理解できていないが、どのくらい余力があったかが確認できるもの。いつものチーム練やローラーでのインターバルと比較しても、余裕がない(紫色の線はバッテリーのようなもの)。

 

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Time in iLevels(勉強中)

こちらも勉強中。どちらにしろ右側と左側にパワーが分布している。

 

 

ということで、この冬のトレーニング、最優先の2項目が確定

無酸素運動容量の絶対値の向上及び反復能力の向上

体幹及びペダリングスキル(アンバランスの縮小)

 

 

それにしても、シニアクラス出場者の面々は濃い。

独特の雰囲気で、スタート前のゆんたくも面白かった。

 

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Kさん撮影。いつもありがとうございます。

 

Training and Racing with a Power Meter (English Edition)

Training and Racing with a Power Meter (English Edition)

 

 

 

パワー・トレーニング・バイブル

パワー・トレーニング・バイブル

 

 

GTローラーをスマート化したら、メニュー練習の質が向上した!

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GTローラーを今年4月にスマート化した。

かれこれ8カ月ほど使ったので、簡単なインプレをしてみる。

 

スマート化の仕方やZWIFTとの接続などは公式サイトやいろいろなブログ等で

紹介されているので、ここでは書かない。

(※私の環境は、主にZWIFTに接続して利用)

 

 

メリット

メニュー練習に集中できる

スマート化するとメニューに集中できる。とにかくこれが大きい。

このことだけでもスマート化して良かったと思える。

 

パワー値を指標にローラーでメニューをこなす場合、これまでは、フロントフォーク近くの負荷調整レバーで負荷を上げつつ、シフトアップまたはシフトダウンしてターゲットのパワーになるよう調整していた。

 

単調、単純なメニューであれば、このやり方でもそこまで不都合はない。

だが、数十秒や1分などの短時間で負荷やケイデンスを変えるメニューの場合は、それなりの作業になるし、狙った負荷に調整できないこともある。

 

スマート化すると、負荷調整の作業が不要になる。

ウォーミングアップ、メインメニュー、レスト、ダウン、これらの負荷が自動で調整される。

シフトチェンジも基本的に必要ない。

ただただ回すのみだ。

 

勝手に負荷が変わることに違和感を覚える人もいるようだが、私の場合は集中力が増す。

どの筋肉を使っているか、左右差を感じるか、フォームは崩れていないか、呼吸はどうか。

途中で余計なことを考えなくていいので、自分自身の身体を観察し続けられる

呼吸や身体の感覚に集中していくと、「もう無理だ」「きつい」という感情と身体の痛みを分けて捉えることができるようになる。

苦しいなかでも、感情を俯瞰し、実際に身体にどんな生理的な変化が起きているのか、乳酸がたまってきついのか、心拍が限界できついのか、フォームが崩れて特定の部位に負担がかかってしまっているのか、観察していく。

このブログの1本目の記事、「覚醒せよ~」で紹介したが、苦痛をコントロールする対象としてとらえることができるようになる。

 

私はZWIFTのトレーニングメニューを主に使っているが、メニュー練習は、サイクルコンピュータに入力してすることもできる(機能が必要。パイオニアだと、CA600にはあるが、CA500にはない)。サイコンがGTローラーの負荷を自動で調整してくれる。

また、GROWTACオリジナルアプリでもメニュー練習ができる。

サイコンやアプリであれば、ZWIFTのような毎月の支払いもない。

 

 

ZWIFTのレースやグループライドを楽しめる

楽しみにしていた週末のグループライドが雨で中止になった場合、ただのローラー練習をやらなければならないというのは、なかなか苦痛だ。

レースが近くモチベーションが高い時期には、ローラー練習をこなすのも苦にならないが、そうではない場合、気持ちを切り替えるのが難しい日もある。

そういったときに、ZWIFTのレースやグループライドに参加し、バーチャルライドを楽しめるのはなかなかいいものだと思う。

 

 

デメリット

屋外での使用に制限あり

屋外でもモバイルバッテリーを使って1時間程度なら問題なく使用できた(どのくらいまでなら使えるのかは不明)ので、屋外使用ができないということはない。ただ、電子機器を使う以上、雨天の屋外での使用は無理だろう。

 

 

まとめ

GROWTACの開発コンセプトで触れられているが、メーカーとしては、

スマートトレーナーは進化途中で、GTローラーは高価な部類に入るトレーナーであることから、新たな商品を開発して『買い直し』を要求することは本意ではなく、GTローラーを長く使ってもらいたい』という意図でGT-eSMART(スマート化ユニット)を開発したとしている。

確かに、GTローラー自体は純粋なスマートトレーナーとして開発されているわけではないので、ハード面から生じる一定の制約はあるようだ。

しかし、GTローラーをすでに使っているユーザーにとっては、多額の出費をせずにスマート化できるというのはとてもありがたいことだと思う。

 

WahooTacxなど、スマートトレーナーとして完成度の高いものはある。

しかし、GTローラーのように、実走に近い感覚でペダリングできるものはあまりない。

個人的にGTローラーはペダリング技術の向上にとても役立つと感じていて、スマート化すれば、実走に近いペダリングをしながらパワートレーニングができる。

GTローラーユーザーであれば、新たなスマートトレーナー購入ではなく、スマート化を検討しても悪くないと思う。

 

  

 

 

 

男女の違いをEQで乗り越える ~EQ こころの知能指数 vol.2

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EQ こころの知能指数

ダニエル・ゴールマン

 

EQについて二つ目の記事になる。 

前回の記事では、私たちの脳で情動のハイジャックが起こる仕組みを説明し、

・「感じる知性」と「考える知性」のバランスが人生の質を向上させること

・EQの領域は5つあり、そのうち「自分自身の情動を知る」ことが情動に関わるあらゆる知性の基礎になること

などを書いた。

 

EQ ~こころの知能指数」では実際に社会生活での応用として職場や医療、教育などについて書かれているが、今回は悩み多き結婚生活や男女間の問題について紹介する。

 

 

男女の違いはどこからくるか

男は火星人、女は金星人、男脳、女脳など、男女の情動の違いはいろいろな例えをもって話される。男女の違いは、生物学的要因から発しているというのは、ある程度正しい。

だがそれだけではない。男女が情動的に異なる世界で育つことも一つの要因だ。

 

一般的に、親は息子よりも娘とのあいだで感情を話題にすることが多い。息子とのあいだでは感情の原因や結果の話をするのに対して、娘とのあいだでは感情そのものを話題にするのだ。

これは女児が男児より早く言語能力が発達しやすいこととも関係しているが、「男の子なんだから泣かない」などのある種の価値観も関係している。

男児は感情を口に出すことがあまり奨励されない環境で育つことになるので、自分の感情にも他人の感情にも無関心になりがちだ。

 

遊び方も異なる。

女の子は親しい者だけの小さなグループを作り、なるべく敵対せずに仲良く遊ぼうとする。男の子は大きな集団で競争しながら遊ぶ。

遊んでいくなかで、男子は孤高かつ非常な自主自立を誇りとし、女子は親密に結ばれた集団の一員であることを重視するようになる。男子は自分の自主自立を侵すものに脅威を感じ、女子は自分たちの仲を決裂させるものに脅威を感じるようになる。

その結果、男と女では会話から期待するものが違ってくる。男は「ものごと」について話をするだけで満足するが、女は情緒的なつながりを求めるのだ。

 

このような環境で育つため、男と女では感情を処理する能力に大きな差がでる。

女性は感情のサインを読みとる能力や自分の感情を表現する能力にすぐれ、男性は、弱さ、罪悪感、恐怖、苦痛に関係する感情を最小限に抑える能力にすぐれることになる

 

こうしたことから、あらゆる感情について、女性は男性よりも強く感じ、興奮しやすい。

女性は感情面のマネージャー役として結婚生活に入るのに対し、男性は二人の関係を維持する感情面のマネジメントがいかに大切かをあまり実感しないまま結婚生活に入る

 

妻たちにとって、親密さとはいろいろなことについて、特に二人の関係そのものについて話し合うことを意味するが、男たちはそれを理解できない。

意見の不一致をどう認め合うかについて、意見を一致させることが、結婚生活を長続きさせるコツである。男と女は扱いの難しい感情と向かい合う際の性差を克服しなければならないのだ。

 

容赦のない批判

結婚生活の危機を知らせる早期警戒信号は容赦のない批判だ。

怒りでカッとなると、苦情は人格攻撃になってしまう。

人格に対する攻撃は理にかなった苦情に比べて、感情をはるかに傷つけるインパクトがある。そしてこの攻撃は、相手が聞いてくれていないという思いが強くなるほど、頻繁になっていく。

人格攻撃が激しさを増すと、受け止める側には屈辱感が生まれ、自分は相手に嫌われている、自分は欠陥品だと思われていると感じさせてしまう。これでは受け止める側は自己弁護に走るばかりになる。

 

相手から攻撃された配偶者は、反撃か逃避の反応にでる。

反撃は空しいののしりあいになり、みじめな状況になるが、逃避反応はもっと破滅的だ。

相手に対する徹底的な拒絶は、究極の防御となる。対話から完全に身を引き、冷たく距離を置き、相手を見下し、不快感をあらわにする拒絶は、相手を強烈に打ちのめす。

よくあるのは、非難や軽蔑の言葉を投げつける妻に対して夫が石のような殻に閉じこもる、というパターンだ。

拒絶反応が頻繁に出るようになると、人間関係は荒廃する。

  

有害な自動思考

夫婦の感情的な口論の背景には彼らの思考があるが、その思考はもう一段深いレベルの「自動思考」によって決定されている。

自動思考とは、自分自身や人生で関わる人々について、瞬間的に脳裏に浮かぶ仮定的背景のようなものだ。

うまくいっていない夫婦間でよく見られるものとして、妻の思考の背景にあるものは、「彼はいつも怒って私を脅す」という自動思考、夫のなかには「彼女には俺をこんなふうに扱う権利はない」という自動思考だ。

自分は罪もないのに犠牲になっている、あるいは、自分の怒りは正当である、という思考だ。

自分が犠牲になっているという思考が引き金になって情動のハイジャックが起こると、当面は自分が犠牲にされた場面ばかりあれこれ思い出して考えるようになり、相手がこれまでしてくれたことの中でそうした思い込みを打ち消すような行為もあったことを思い出さなくなる。すべて否定的なレンズを通して解釈されてしまう。

 

悲観的な考え方をする人には、情動のハイジャックが起こりやすい。

情動のハイジャックが頻繁に起こり、その結果生じる心痛や怒りからの回復が難しくなると、絶え間ない危機が作り出される。

些細なことで感情の乱高下を起こすようになるが、それを情動の「氾濫」という。

「氾濫」状態の夫(妻)は配偶者の否定的な対応やそれに対する自分自身の反応が手に負えなくなって、何ひとつコントロールできない最低の気分に陥る。こうなると、聞くこと見ること曲解せずにはいられず、冷静に考えることができない。考えをまとめられないので、原始的な反応に頼るようになる。とにかくやめてほしい、ここから逃げ出したい、と考える。かと思うと反撃したりする。情動の「氾濫」は際限なく続く情動のハイジャックなのだ。

 

破滅的な方向へ転換していく決定的な曲がり角は、夫婦のどちらかがほとんど常に情動の氾濫状態になってしまった場合だ。

情動の氾濫状態に陥った夫(妻)は配偶者のやることなすこと全てを否定的に受け取り、悪いほうへ解釈する。その結果、小さな問題が大げんかになり、心の休まる暇がない。時を重ねるにつれて、情動の氾濫状態に陥った夫(妻)は結婚生活のありとあらゆる問題をすべて深刻で修復不可能と見るようになる。

 

非難と軽蔑、自己弁護と相手に対する拒絶、有害な自動思考と情動の氾濫のとめどないサイクルそのものが、情動の自己認識と自己管理、共感、相手や自分を慰める能力などの崩壊を反映している。

  

男と女はそれぞれの苦痛から逃れるため正反対の作戦に走り、結局、感情的な対立に正反対のスタンスで対処しようとする。夫は必死で対決を避けようとし、妻はなんとか対決に持ち込もうとする。

 

妻が意見の対立や苦情を話題にしようとすると、夫は口論になるのを見越してなかなか相手にしない。逃げ腰の夫を見て妻の口調はきつくなり、非難しはじめる。対抗して夫が防戦したり殻に閉じこもったりすると妻は不満と怒りを感じ、さらに夫に対し軽蔑をつけ加える。妻から言われなき非難をされていると感じた夫は、「罪なき犠牲者」といった自動思考に陥り、情動の氾濫を起こしやすくなり、ますます防御を強め、殻に閉じこもる。しかし、夫が殻に閉じこもると、今度はどうしようもなくなった妻が情動の氾濫を起こすことになる。

 

アドバイス

一般的に男性と女性では感情を微調整すべき方向が違う。

男性は、衝突を回避しようとしないこと。妻が苦情や意見の相違を口にしたら、それは夫婦の関係を健全で望ましい方向に保ちたいという愛情ゆえの行為であると受け止めること。

 

また、最初から実際的な解決策を提示して議論を省略するような態度を見せないよう注意しなければならない。

妻にとっては、話をちゃんと聞いてくれること、自分の気持ちに共感してくれること(同意は不要)が何より重要なのだ。

 

女性は、男性にとって最大の苦痛は妻の糾弾が激しすぎることにあるのだから、夫を非難しないよう気をつけるべきだろう。夫の行為について苦情を言うのはいいが、夫の人格そのものを非難し、軽蔑してはいけない。苦情を述べるときはある特定の行為が自分に苦痛を与えていることをはっきりと伝えることだ。

 

離婚まで行き着く夫婦には、口論が白熱したときに緊張を和らげる工夫が欠けている。

口論を横道にそらさない、相手に共感して聞くという基本的な対応が重要だ。

 

わずかのEQ-自分の(そして相手の)感情を静める能力、共感する能力、相手の話をしっかり聞く能力―を身につけるだけでも意見の対立をうまく収められるようになる。そうなれば、夫と妻のあいだで「健全な意見の不一致」が可能になる。「上手なけんか」は結婚生活を豊かにし、結婚生活をおびやかす有害な思考を克服する機会になる。

  

心を静める工夫

強い情動の根底には、かならず行動を喚起する衝動がある。この衝動をコントロールすることが重要だが、愛する者とのあいだには失うものが多いため、コントロールはとくに難しい。夫婦の問題がひきおこす情動反応には、人間の最も深い欲求がかかわっている

愛されたい、大切にされたい、という欲求だ。捨てられたり愛情に応えてもたえないことへの恐れもある。恐れは扁桃体を刺激する。扁桃体への刺激は情動のハイジャックに繋がる。夫婦げんかで命がかかっているかのように反応する人がいるのも、理由がないわけではないのだ。

 

とはいえ、夫か妻が情動のハイジャック状態になっているあいだは、何ひとつ前向きに解決することはできない。

まずは感情を静めることだ。しかし、「氾濫」状態になってしまうと静めるのには結構時間がかかる。

話し合いが白熱し、「氾濫」の兆候を感じら、いったん20分ほど休憩をとるか、後日に持ち越したほうがいいだろう。夫婦間であらかじめそのような取り決めをしておくと効果的だ。スムーズに話し合いを終えたり、中断することができる。

 

感情を静めるには、以下の方法が有効だ。

【思い込みを問い直す】

自分は罪もないのに犠牲になっている、あるいは、自分の怒りは正当である、という思考、こうした思考を問い直す。

そのためには、心に浮かぶ否定的な思考を監視し、悪く解釈する必要のないことを理解し、思い込みを問い直すための証拠や視点を意識的に思い浮かべてみるとよい。

 

【心を開いて聞く】

夫婦ともに情動のハイジャックにあるときも、どちらかが怒りを乗り越えて相手の話を聞き、関係修復を求めるサインに応えることはできるはずだ。

攻撃に対して身構えた姿勢で話を聞いていると、行動を変えて欲しいと言っている配偶者の苦情が自分に対する非難に聞こえてしまい、相手の言い分を無視したり反駁してしまう。

最悪の場合でも、敵意や否定に満ちた部分(意地悪な言い方、侮辱、軽蔑口調の批判)を意識的に削除して相手が本当に言いたいことだけを聞く努力は可能だろう。 

 

心を開いて相手の話を聞く最も効果的な形は、共感だ。

相手の言葉の背景にある感情に耳を傾ける。

 

その練習の一つとして「鏡映法」がある。

一方が苦情を口にしたとき、もう一方は自分の言葉を使って相手の発言内容を鏡のように再現する。その際、思考だけでなく感情をとらえるよう努力する。

苦情を口にした相手に確認しながら進み、きちんと鏡映できていないと言われたら、できるまでやり直す。

難しいが、これだけで当面の攻撃がやわらぐこともあるし、エスカレートさせずに問題点を絞って話し合えたりする。

 

また、話の範囲を当面の問題点に絞り、人格攻撃にエスカレートさせないことも重要だ。

苦情を述べる際の上手な形式は「XYZ」で、「あなたがXしたので、私はYな気持ちになった。Zしてくれればよかったのに」と伝える。

「あなたって思いやりのない人ね。自分勝手な大馬鹿者だわ」ではなく、

「あなたが夕食の約束に遅れるという電話をくれなかったので、私は大切に思われていない気がして腹が立った。遅くなるなら電話で知らせてくれればよかったのに」

という具合だ。

 

最後に 

ここまで読んで、いつもの(巷にあふれている)アドバイスと同じじゃないか、と感じる人もいるだろう。

当たり前と言われればそうかもしれない。

だが、その当たり前ができないから皆苦労する。

 

ここでvol.1で書いたEQの5つのうち、1番目の重要性を確認する必要がある。

自分自身の情動を認識する

 

当たり前のことだが、これがとても難しい。

だが、これができれば、夫婦問題も含めて多くの問題が解決するだろう。 

 

「小さなことが積み重なって~」と相手を非難するのはよくある。

だが、その小さなことを放置した自分自身の責任はどうだろうか。

その小さなことが起こったとき、自分自身の情動をちゃんと認識し、相手の行動の背景を確認したり、必要であれば自分が不快に感じることを相手に伝えただろうか。

小さなこととして、自分の情動をないがしろにしたのは自分自身である。

相手を責める前に、積み重ねる必要もないのに、積み重ねなかったか、自問する必要があるだろう。

 

 

この本では、「練習を怠りなく」と日々の取り組みが大切であることを述べている。

個人的には「自分自身の情動を認識する」トレーニングとしては、やはりマインドフルネスが最も効果的ではないかと考えている。

 

マインドフルネスについては、これまで何回か記事にしたが、今後も理解が深まれば記事を書く予定。

 

EQ こころの知能指数 (講談社+α文庫)

EQ こころの知能指数 (講談社+α文庫)

 

  

マインドフルネスストレス低減法

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rj77.hatenablog.com

rj77.hatenablog.com

 

 

自分自身の情動を知ることがEQの基礎 ~EQ こころの知能指数 vol.1

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EQ こころの知能指数

ダニエル・ゴールマン

 

有名大学出身で採用試験はトップで通過したけど、仕事ができない。周囲と協調して動けない。

 

「あの人、勉強はできるのにね・・・」

IQは高いのに、社会でうまく生きていけない。

その理由を本書の言葉で説明するなら、「学力試験で測定されるような認知能力は広範な知性のごく一部分しか反映していない」し、「感情をコントロールする能力は学業成績とは別だ」からだということになる。

 

人間の能力の差は、自制、熱意、忍耐、意欲などを含めたこころの知能指数(EQ)によるものであり、それは教育可能だというのが著者の考えだ。

 

本書は1995年に発表され、全世界でベストセラーになった。

特に印象に残ったのは第9章「結婚生活の愛憎」だったが、その部分も含め、2回に分けて紹介してみようと思う。

 

 

EQとは

そもそもEQとは何か。

EQは“Emotional Intelligence Quotient”の略で、本書では「こころの知能指数」と訳されている。IQは“Intelligence Quotient”で、知能指数だ。

 

こころの知能指数といっても漠然としているが、おおまかには、自分の感情を認識・コントロールし、他者の感情を理解し、共感する能力をEQといっていいだろう。

 

感情・情動

心の一番深いところから発する情熱や願望は、人間を動かす根源的な力だ。

有名になりたい、一番になりたいという願望、人の役に立ちたい、社会に貢献したいという情熱は、文明発展の原動力になる。

強い愛情があればこそ、大切な子どもを助けたいという必死の思いがあればこそ、親は自分自身の安全を犠牲にしてでも子どもを守ろうとすることができる。

 

そもそも感情は、本質的には行動を起こそうとする衝動であり、それが急激で一時的なものを情動と呼ぶ

これらは、自然淘汰の過程で私たちの脳に刻みつけられた反射的な行動指針だ。

  

怒りを感じると、血液が両手に集まり、武器を握ったり敵になぐりかかったりする準備をする。心拍数が上がり、アドレナリンなどのホルモンが一気に増加して激しい動作に必要なエネルギーを作り出す。

恐怖を感じると、血液は両脚などの大きな骨格筋に流れて逃げる準備をする。顔は血の気が引いて青白くなる。同時に、ほんの一瞬、からだが凍りついたように動かなくなり、逃げるべきか隠れるべきかの決断をすることになる。注意は目の前の脅威に集中し、最善の対応をさぐる。

驚いたときに眉をつりあげるのは、視界を広くし、網膜を刺激する光を多く取り入れる働きがある。多くの情報を収集し、正確な状況判断や最適な行動を選択するためだ。

 

このように、感情、情動は種の保存、繁栄に大きな役割を果たしてきた。

しかし、それらが必要とされていた狩猟採集時代の環境と現代の環境は全く異なり、怒りや恐怖の感情をそのまま出すようなことがあると、不都合が生じてしまう。

 

特に情動による急激な心身状況の変化は、反応は速いが、完全に状況を確認する前に反応してしまうので、よく間違いを起こしてしまうのが困ったところだ。

 

典型的なのはトラウマだろう。

激しい恐怖にさらされた経験は、脳に深く刻まれ、その後、少しでも似たような状況を感じてしまうと、客観的には何ら問題ない状況だったとしても、必要以上の反応をしてしまう

このような反応は狩猟採集の時代であれば、敵から攻撃を受ける前に一瞬で逃走することができ、命を守るために大いに役立ったはずだ。ゆっくり考えてから結論を出すよりも、ほんの少しでも危険を察知したら、行動したほうが生存の確立が上がる。

しかし、現代ではそのようなことにはあまり遭遇することはなく、かえって周囲に迷惑をかけるし、場合によっては、自身のキャリアや大切な人との人間関係を壊してしまうこともある。

 

情動のハイジャックと脳のメカニズム

問題行動を起こしてしまうのは、何もトラウマを抱えている人に特有の問題ではなく、誰にでも起きうることだ。この本では、情動によって理性的な思考や行動がとれなくなることを「情動(扁桃体)のハイジャック」と呼んでいる。

 

そこで、なぜ人は理性的な思考や行動がとれなくなるのか。脳の仕組みから情動のハイジャックが起こるメカニズムを簡単に説明する。

(以下の内容は、本書のほか、サイトMindful Music内の記事、「マインドフルネスを理解するための脳科学の基礎【2】感情のコントロールと扁桃体」を参考にした。)

 

人の反応には大きく分けて2つのルートがある。幹線ルート緊急ルートだ。

 

幹線ルート

テーブルの上にリンゴがあったとする。

まず、情報は目から入り、視床を経由して一次感覚野(一次視覚野)へ届く。

この段階では「何かの物体がある」としか認識していない。

 

 

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幹線ルート 画像はMindful Music、上記記事より引用

 

感覚野に届いた情報は、連合野に送られる。

頭頂連合野では、「テーブルに置かれた」という空間的な情報を認識する。

側頭連合野では「赤くて手のひらサイズの物体」といった形や色を認識する。

連合野は記憶を保存している海馬と繋がっているため、「テーブルに置かれたリンゴ」という認識ができるようになる。

 

さらに、前頭連合野では、「あれはリンゴだ。食べたいな。今すぐ食べようか、あとにしようか」という推測、判断、調整、意思決定などを行うことになる。

 

意思決定が行われれば、連合野から運動野へ情報が送られ、実際に行動を起こす準備をすることになる。

 

この一連の流れが、人が理性的な判断を下して行動するための幹線ルートだ。

 

緊急ルート

以上のように、幹線ルートは段階を踏んで情報を処理しているのがわかるだろう。

これがリンゴならいいのだが、敵だった場合はどうなるか。

 

茂みにヘビがいてこちらに向いているとする。

「何かグルグル巻きの物体があるな」(一次感覚野)

⇒「茂みのなかに隠れているぞ」(頭頂連合野

⇒「緑色で先端から赤く細長いものを出しているぞ」(側頭連合野

⇒「これは毒ヘビではないか」(海馬から引き出す)

⇒「確認しようか、しばらく様子を見ようか、逃げようか、どうしようかな」(前頭連合野

⇒「逃げよう」(運動野や扁桃体へ情報送信)

 

こんなに呑気に情報を処理していては、ヘビにかまれてしまう(笑)

そこで緊急ルートの出番だ。

 

緊急ルートでは、視床から扁桃体へ情報が送信される。

扁桃体に情報が伝わると、

「ドクロを巻いている物体」=「ヘビ」=「危険」=「緊急事態」

という判断が瞬時に行われる。

 

 

緊急事態と判断した扁桃体からは、脳や身体全体へ「逃げろ!」と発令することになる。

 

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緊急ルート 画像はMindful Music、上記記事より引用

 

その発令によって、

視床下部へ命令し、ストレスホルモンを分泌、血圧や心拍が上昇し、筋肉が緊張する。

大脳新皮質の注意回路をコントロールし、ヘビに注意を集中させる。

 

また、緊急事態という情報が、「⼤脳新⽪質」を駆け巡り、その結果、「恐怖」や「不安」といった意識的な感情が⽣まれ、さらに扁桃体を刺激し続ける。

 

このようにして、扁桃体が⽣み出す「恐怖」や「不安」という感情が、脳と⾝体を完全に⽀配する。天敵を前にして、闘争or逃走の行動を起こさなければならないとき、論理的に考えている暇はない。脳と身体を緊急事態モードにしなければならないのだ。

これが、「情動(扁桃体)のハイジャック」と呼ばれる現象である。

 

  

感じる知性・考える知性

幹線ルートのおかげで人は理性的な判断ができ、緊急ルートがあるので緊急事態に対応できる。どちらのルートも人類の繁栄に必要不可欠のものだ。しかし、緊急ルートについては、人類の生存環境の変化により、情動のハイジャックによる誤作動という問題を抱えるようになった。

 

注意しなければならないのは、どちらが良い、悪いという話ではないことだ。

危険などを察知し、瞬時に行動を起こそうとする反応=情動は、いわば「感じる知性」といえる。

それに対し、物事を筋道たてて理解し、論理によって行動を起こそうとするのは「考える知性」である。

逆説的だが、理性的な判断を下すために感情は不可欠な要素だ。感情によって私たちはまず大まかな方向性を与えられ、そこではじめて論理的知力を発揮できる。

人生をうまく生きられるかは、両方の知性のバランスによるのだ。

 

EQの5つの領域

では、両方の知性のバランスをとるためにはどうしたらいいか。

必要なのはEQだ。

EQの具体的な内容として、本書は以下の5つを挙げている。

  1. 自分自身の情動を知る。
  2. 感情を制御する。
  3. 自分を動機づける。
  4. 他者の感情を認識する。
  5. 人間関係をうまく処理する。

 

これらのなかで、①は情動に関わるあらゆる知性の基礎になる。

 

そもそも、情動が生起するタイミングや内容をコントロールすることは不可能だ。

怒ったり、悲しんだりすることを止めることはできない。

止めるということは、人間らしい生き方を放棄するということだ。

 

生起するタイミングや内容をコントロールできないからこそ、自分自身の情動を認識する能力が重要になる。

自分自身の情動を客観的に認識し(1)、状況を違う視点でとらえられるようになると、感情を制御しやすくなる(2)。

自分自身が本当に求めていること、達成したいことを認識し、自分の能力、周囲の状況などを正確に把握すれば、プレッシャーやストレスを適度にコントロールしながら、自分を動機づけ、目標に向かって努力できる(3)。

また、自分自身の感情、情動を認識できれば、他者の感情を認識することができる(4)。共感だ。

共感できれば、意見の相違があっても、相手を尊重しつつ、適切な解決方法を考えることができる(5)。

 

これがEQの基本である。

 

とりあえず今回はここまで。

 

次回は今回の話をベースに「結婚生活の愛憎」について紹介してみたい。

 

  

EQ こころの知能指数 (講談社+α文庫)

EQ こころの知能指数 (講談社+α文庫)

 

 

死を通じて見つめる人生の意味 ~イワンイリッチの死

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イワン・イリッチの死

トルストイ

 

生まれたら、必ず死ぬ。
自分自身もこの世に生を受けた以上、必ず死を迎える。
頭ではわかっているが、実際に自分のことと受け止めることは難しい。

 

 イワン・イリッチは帝政ロシアの官吏。

若いうちは、ある地方の県知事の秘書官のような地位について才能を発揮し、その後、裁判官に転身。最終的には中央裁判所判事という地位にたどり着く。

公務員というよりは、高級官僚といったほうがしっくりくるだろう。

 人柄は以下のように描かれている。

つまり才能に富んでいるとともに、快活で人がよく、おまけに社交的な人間であったが、しかし、己の義務と信ずるところは、厳格に実行していた。彼が自分の義務と信じていたのは、とりもなおさず、最高の地位を占めている人々の所信なのであった。(19ページ)

 

結婚もし、子宝にも恵まれた。

しかし、結婚生活は夫婦円満といえるようなものではなかった。

新婚のころは良かったが、妻は次第に何かにつけて彼を罵るようになった。

家庭での居心地が悪くなればなるほど、イワン・イリッチは仕事に没頭する。

 

イワン・イリッチが追い求めていたのは、官界での栄達と快適な私的生活だった。

夫婦仲はいまいちだったが、それが崩壊しないように処する術は身につけていた。仕事は手堅く、見事な処世術で栄達を勝ち取り、交友の範囲も立派で、不自由のない生活を手に入れていた。

社会的にはいわゆる成功者といっていいだろうし、本人もそれに満足していた。

 

しかし、ふとしたきっかけで不治の病に侵され肉体的な痛みに苦しむ。
そのなかで、自分の人生が全て虚偽だったのではなかったかと疑い、精神的にも苦しんでいく。

妻や娘、同僚や友人たちとの関係がいかに空虚なものであったか。

治る見込みがないのは明らかなのに、養生すれば良くなるという周囲の嘘。それに合わせて行動してしまう自分自身の嘘。

 

 世間の目から見ると、自分は山を登っていた。ところが、ちょうどそれと同じ程度に、生命が自分の足もとからのがれていたのだ……こうしていよいよ終わりがきたーもう死ぬばかりだ!

 それでは、いったいどうしたというのか? なんのためだろう? そんな事があるはずない! 人生がこんなに無意味で、こんなに穢らわしいものだなんて、そんな事のあろうはずはない! よし人生が真実これほど穢らわしい、無意味なものであるにせよ、いったいなぜ死ななければならないのだ? なぜ苦しみながら死ななければならないのだ? なにか間違ったところがあるに相違ない。(89ページ)

 

 勤務も、生活の営みも、家庭も、社交や勤務上の興味もーすべて間違っていたかもしれない。(中略)

 「もしそうだとすれば」と彼はひとりごちた。「自分に与えられたすべてのものを台なしにしたうえ、回復の見込みがないという意識をもちながら、この世を去ろうとしているのだったら、その時はどうしたものだ?」彼はあおむけになって、すっかり新しい目で自分の全生涯を見直しはじめた。(96ページ)

 

そして、イワン・イリッチは死ぬ2時間前に「本当のこと」はなにか自問をはじめる。


主人公が苦しみ、悶えて死んでいく描写は、凄まじい。
トルストイは一度死んだことがあるのかと思うほどだ。

 


冒頭でも書いたように、死を自分のこととして受け止めるのは難しい。
いつか死ぬものだと思ってはいても、いつの間にか死がきて、いつの間にか
終わっているというような感覚で捉えている自分がいる。
事件や事故など、死について日常的に感じる感覚は、ある意味劇的
一瞬で終わるものが多い。
あるいは、告別式に参列し、悲しんでいても、どこか他人事の自分がいる。

しかし、この小説を読むと、死はそんな簡単に過ぎていくものではないだろう
ということを実感させられる。
程度の差はあれ、死は徐々に迫り、苦しみをもたらすはずである。
そのとき自分はどのように死に向き合えるかである。

死を通じて人生の意味を見つめなおすきっかけになる小説だと思う。

物語の冒頭は、イワンイリッチの死を知った同僚の反応や告別式のシーンから始まるが、物語の最後まで読んだ後にこの部分をもう一度読むのがおすすめ。
死が他人事になっていることをより実感できる。

102ページと短いが、濃密な読書体験となる一冊だ。
 

 

※ この小説は、以前記事にした、黒澤明の「生きる」にもヒントを与えたといわれる。2つの作品を対比するのも面白い。

 

  

イワン・イリッチの死 (岩波文庫)

イワン・イリッチの死 (岩波文庫)

 

 

 

 

rj77.hatenablog.com

 

 

Bluetooth接続でZWIFTやるなら、心拍計はWahooのTICKR心拍数モニターが便利かも

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いろいろ訳あって、外で自転車に乗れない日々が続いている。
ここ1ヶ月ほどずっとローラーなので、一度は解約したZWIFTに再度加入してひたすらメニューをこなす日々だ。

 

さて、ZWIFTを再開するにあたり、ANT+ドングルをノートPCに接続してプレイしていたが、ノートPCの処理速度が遅く動きがカクカクすること、配線がわずらしいことから中古のipad air(初代)を購入し、Bluetooth接続でプレイしてみることにした。

 

結果、動きがなめらかになり、配線もスッキリ(というかなし)。
とても快適にプレイできるようになったのだが、一つ問題が発生した。
ZWIFTにBluetooth心拍計を接続すると、サイコンで心拍の表示がされなくなったのだ。

 

いろいろ調べてみると、Bluetoothは同時に二つのデバイスで受信できないようだ。

 

そこでWahooのTICKR心拍数モニターが活躍する。
この心拍計BluetoothとANT+両方に対応している。
なので、ipad airのZWIFTはBluetoothでデータを受信し、サイコンはANT+でデータを受信することによって、両方で心拍情報を保存することができるようになった。

 

ということで、ZWIFTをBluetooth接続で楽しみたい方にはオススメ。


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Wahoo TICKR心拍数モニター(iPhoneおよびAndroid用)

Wahoo TICKR心拍数モニター(iPhoneおよびAndroid用)